【大野寺(奈良県宇陀市)】壮大な弥勒石仏と境内を彩るしだれ桜

奈良県宇陀市、室生大野の町のはずれに位置するおおでら

境内の南側を流れる宇陀川を挟んだ対岸の岩壁には高さ11.5mにも及ぶ弥勒石仏が線刻されています。

大野寺はこんなところ

大野寺は役小角によって白鳳九(681)年に開基され、弘法大師が室生寺を開山したときに当寺を西の大門に定め、本尊弥勒菩薩を安置して慈尊院弥勒寺と称しました。その後、地名を名づけて大野寺と寺号を改めたと伝わります。

興福寺のえん大僧正を発願主とし、後鳥羽上皇の勅願によって承元元(1207)年に弥勒摩崖仏が造立されたと伝わります。その二年後の承元三年三月六日には後鳥羽上皇が石仏開眼供養のため行幸されました。
(お寺発行のパンフレットと現地案内板より)

大野寺は室生大野の町の南の外れに位置し、境内の南側を宇陀川が流れます。小さな境内には本堂と庫裏、弥勒摩崖仏を臨む遥拝所が立ち、春には二本の小糸しだれ桜をはじめとして30本ほどの桜が咲き誇ります。

かつて東は田口の長楽寺、西は大野寺、南はあかばねの仏隆寺、北は名張の丈六寺とともに室生寺の四門をなし、この内側を聖域と見なし、参詣者は山を越え、谷を歩いて室生寺へと向かいました。

本堂にはユニークな縁起が伝わる地蔵菩薩(重要文化財)がお祀りされており、お寺の方にお願いすることで拝観可能です。

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境内を散策する

しだれ桜と身代わり半焼け地蔵菩薩

大野寺は明治三十三(1900)年の火災によって全焼し、現存する建造物はそれ以降に再建されたものです。

こじんまりとした表門を色づき始めた銀杏が彩ります。

境内の中央に本堂が南面して立ち、その東側に庫裏、西側に遥拝所と観音堂が位置します。写真の中央と表門の脇に立つしだれ桜は小糸しだれ桜という全国的にも珍しい品種であり、樹齢300年を超える巨木です。

本堂には秘仏ご本尊の弥勒菩薩のほかに、ユニークな縁起が伝わる地蔵菩薩をはじめとする多数の仏さまがお祀りされています。

  • 地蔵菩薩立像
    木造彩色・玉眼・截金、寄木造、像高80.3cm、重要文化財

地蔵菩薩は豪族の侍女が火焙りの刑に処せられるとき、身代わりとなり、半身が焼けたため身代わり焼地蔵菩薩と云われます。談山神社氏子総代であり、ならまほろばソムリエの雜賀耕三郎さんのブログによると、本像はかつて大野、緑川の地にあり、半身が焼けたあとに大野寺に移されといいます。この伝説からその地を現在は「大字緑川字半焼」というそうです(雜賀耕三郎さんのブログより)。

高さ11.5mにも及ぶ弥勒摩崖仏

遥拝所(左)と観音堂(右)

弥勒摩崖仏は境内の南側を流れる宇陀川対岸の岩壁に線刻されており、遥拝所からその姿を拝します。

石仏縁起には宇陀川を隔てて弥勒摩崖仏を彼岸に造立すると記されており、大野寺の対岸が彼岸であり弥勒の浄土となります。

高さ約33mの弥勒巌に13.8mの二重円光背を切り込み、その内側を平らに削って弥勒仏が線刻されています。

頭部を小さく刻み、片足ずつ蓮華座に乗るふみわりれんにすらりと直立し、右手はがんいん、左手はいんを結びます。

参考:笠置寺の弥勒摩崖仏

大野寺の弥勒摩崖仏は元弘の乱で焼失した笠置寺(京都府笠置町)のご本尊である弥勒摩崖仏の摸刻像と伝わり、絵画などに描かれた笠置寺の弥勒仏とほぼ同様の姿を表します。

まとめ

ユニークな縁起が伝わる地蔵菩薩がお祀りされ、壮大な弥勒摩崖仏を拝することができる大野寺。普段はお詣りする方もまばらで静かなお寺ですが、桜の時期にはたくさんの参拝客で賑わいます。

最寄り駅の「室生口大野駅」からは徒歩7分ほどとアクセスも良好でお詣りしやすく、室生口大野駅と室生寺方面を結ぶバスが門前に停車しますので、室生寺にお詣りする前後の空き時間に気軽に立ち寄ることも可能です。弥勒摩崖仏は室生寺へ向かう車中から拝することもできますが、ぜひ車を降りて大野寺に足を運んでみてください。

基本情報

  • 正式名称
    楊柳山大野寺
  • 所在地
    奈良県宇陀市室生大野1680
  • 宗派
    真言宗室生寺派
  • 文化財指定
    重要文化財(木造地蔵菩薩立像)
  • アクセス
    近鉄大阪線「室生口大野駅」から約500m/徒歩約7分
  • 駐車場
    境内前にあり/約10台/無料
  • 入山時間
    期間 入山時間
    4月~10月 9時~17時
    11月~3月 9時~16時
  • 入山料
    300円
  • 御朱印
    可/庫裏にて
  • 所要時間
    約15分

 

参考
お寺発行のパンフレット・現地案内板
雜賀耕三郎さんのブログ 最終アクセス2024年7月18日