


奈良県宇陀市、室生寺よりさらに奥まったところに佇む室生龍穴神社(むろうりゅうけつじんじゃ)。
山深くに位置する境内と神秘的な雰囲気に包まれたご神体の「吉祥龍穴」を詳しくご紹介します!
室生龍穴神社はこんなところ
室生龍穴神社は室生寺の東方に位置し、現在は知る人ぞ知るパワースポットとしてにわかに人気を集めています。創建に関しては明らかではありませんが、吉祥龍穴は古来より雨乞いの儀式を行う地であったようであり、『延喜式神名帳』には式内社として記載されています。
当初の御祭神は空海が招請したとされる善如龍王でしたが、現在は『古事記』や『日本書紀』の水の神である高龗神を御祭神とします。また『古事談』によると、興福寺(奈良市)の猿沢池に棲んでいた龍王が采女(後宮の女官)の身投げを忌み、春日奥山に移り棲みましたが、そこにも死骸が捨てられたため室生龍穴に移り棲んだと伝わります。
(室生寺発行の冊子より)
延喜式神名帳:延喜式(弘仁式・貞観式以降の律令の施行細則をまとめた法典)の巻九・十の神名式上・下の総称

境内を散策する
神秘的で幽玄な境内

境内には背丈が高い杉の木が林立し、外界と隔絶されたような神秘的な空気に包まれています。なお、鳥居の手前に立つ二本の杉の大木は樹齢600年以上にもなるそうです。

幽玄な雰囲気が漂う境内には本殿と拝殿が南西に面して立ち、その前方に社務所と収蔵庫を配します。

石鳥居のすぐ右手には根元が一体化した「連理の杉」とよばれる二本の杉があり、その形状から夫婦・家庭円満や家運隆盛のご利益があるとして信仰を集めてきました。

拝殿に掛けられた「善如龍王社」と記された扁額はかつて善如龍王をお祀りしていた名残です。

拝殿の裏手には本殿へと参道がつづいていますが、一般の参拝客は石鳥居からお詣りすることになっています。

本殿の内側からは「若宮社」や寛文十一(1671)年に当地で「ハシラタテ」を行った旨の墨書が残されていました。
つまり、当社殿は春日大社の寛文の造替の一代前に該当する、慶安五(1652)年に造営された春日若宮神社の旧本殿であると考えられています。
(宇陀市ホームページより)
龍が棲む吉祥龍穴

龍穴神社と吉祥龍穴は少し離れたところに位置しています。一度境内を出て車道を5分ほど歩くと龍穴へ続く林道の入口に至り、入口から龍穴までは片道20分ほどの行程です。
林道はアスファルトで舗装され、龍穴の手前に駐車スペースも用意されているため車で向かうことも可能です。

道中には天照大御神が身を隠したという「天岩戸」が鎮座します。天岩戸は日本各地に存在しますが、こちらもそうした岩戸の一つです。

天岩戸は二つに割れた大きな岩からなり、注連縄が巻かれています。

天岩戸からさらに5分ほど歩くと、龍穴の入口となる石鳥居が現れます。

龍穴の手前に立つ簡素な建物は遥拝所であり、ここから龍神にお詣りします。

正面に見える洞穴が龍王が棲むといわれる吉祥龍穴です。
あたりは神聖な雰囲気に包まれ、まさに「心が洗われる」という表現がぴったりな場所でした。

室生の地には吉祥龍穴を含めた三つの龍穴と六つの岩屋(九穴)、五つの縁と三つの池(八海)があり、それぞれに伝説が残されています。先ほどご紹介した天岩戸も六つの岩屋のうちの一つです。
まとめ
神秘的な雰囲気に包まれ、心洗われる体験ができる室生龍穴神社と吉祥龍穴。室生寺とは1kmほどの距離ですので、室生寺へお詣りの際はぜひ室生龍穴神社にも立ち寄ってみてください。
公共交通機関をご利用の場合は、「室生口大野駅」から奈良交通「室生龍穴神社」行きで終点「室生龍穴神社」下車、徒歩すぐです。最初にバスで室生龍穴神社まで向かい、吉祥龍穴へお詣りされたのちに室生寺まで戻るという行程がおすすめです。
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基本情報
- 正式名称
室生龍穴神社 - 所在地
奈良県宇陀市室生1297 - 指定文化財
本殿(県指定文化財) - アクセス
近鉄大阪線「室生口大野駅」から奈良交通バス44系統「室生龍穴神社」行きで「室生龍穴神社」下車、徒歩すぐ - 駐車場
場所 台数 料金 室生龍穴神社 境内前にあり 約20台 無料 吉祥龍穴 入口付近に駐車可 約5台 無料 - 拝観時間
境内自由 - 御朱印
可/室生寺入山受付近くの納経所にて - 所要時間
約15分(吉祥龍穴まで徒歩で往復した場合約1時間)

参考
室生寺発行の冊子
宇陀市ホームページ 最終アクセス2024年10月19日