奈良県大和郡山市、矢田丘陵の麓に位置する矢田坐久志玉比古神社。
重要文化財に指定されている二棟の社殿とプロペラが取り付けられた楼門が見どころです。
矢田坐久志玉比古神社はこんなところ
櫛玉饒速日命は豊葦原中津国(高天原と黄泉の国の間にあるとされる世界)を平定するため、「天乃羽羽矢」を授かり、天磐船で天より降りました。最初に河内国のタケルガノミネに降り立ち、祭祀を営んだものの住まいとはせず、再び天磐船に乗って大和の天空を駆け巡ります。そして、「吾を宮居の地に導き給え」と祈願して天乃羽羽矢を三本を射ると、三本ともこの地に落ち、二の矢の落ちた所に三十二従神と物部氏を率いて降り立ちました。
その後、当社はこの地方最大の古社として創建より六世紀前半までは畿内随一の名社として栄えましたが、仏法の隆盛とともに物部氏は四散し社運は衰退したと伝えられています。
(現地案内板より)
矢田坐久志玉比古神社は矢田丘陵の東側に広がる田園地帯にある小さな集落に位置し、コンパクトな境内にはプロペラの付いた楼門や重要文化財に指定されている二棟の社殿が立ち並びます。
『先代旧事本紀』に記されている故事により櫛玉饒速日命は航空祖神として崇められ、毎年9月20日には航空祭が行われます。
境内を散策する
プロペラが取り付けられた楼門
境内の前面には端から端までとても長い勧請縄が張られています。正確な長さはわかりませんが、70~80mはあるのではないでしょうか。
境内は非常にコンパクトにまとまっているため、10分ほどですべて見て回ることができます。
文化財として貴重な建物はともに重要文化財に指定されている本殿と末社の八幡神社ですが、神社の中で最も目を引くのはこちらの楼門でしょう。楼門自体は珍しいものではありませんが、プロペラが付いた楼門はここ矢田坐久志玉比古神社でしか見られないと思います。
木製のプロペラは中島飛行機製の「陸軍九一戦闘機」のものであり、ほかにも「航空祖神」と記された扁額が掲げられています。
掲げられた扁額は、旧海軍軍人で航空参謀を歴任し、戦後は航空自衛隊のブルーインパルスを創設した源田実さんによって奉納されました。
楼門の背後にある注進縄が巻かれた岩は、櫛玉饒速日命が放った三本の天羽々矢のうち二本目の矢が落ちたと伝わる二之矢塚です。
室町期の貴重な社殿
拝殿と本殿は森に溶け込むように佇み、その前に拝殿が鎮座します。
一般の参拝客が立ち入ることができるのは拝殿の前までとなっています。
枡目が並んだような天井は格天井と呼ばれるもので、太い角材を格子状に組んで正方形を形作り、その上に板をはめ込んで作ります。
拝殿越しの拝観のため少し距離があり、そして瑞垣で囲まれていることから見えにくいのですが、境内の最深部には本殿(右)と末社の八幡神社(左)が鎮座します。
その由緒から矢田坐久志玉比古神社は別名「矢落神社」ともいい、拝殿には「矢落大明神」と記された扁額が掲げられます。
両社殿はともに一間社春日造、屋根は檜皮葺であり、室町時代に造立されたと考えられています。
まとめ
プロペラがついた珍しい楼門や重要文化財に指定されている二棟の社殿を有する矢田坐久志玉比古神社。こじんまりとした落ち着いた雰囲気の神社であり、こころ静かにゆっくりとお詣りすることができるおすすめのスポットです。
公共交通機関をご利用の場合は、近鉄郡山駅と大和小泉駅を結ぶバスをご利用のうえで、「横山口」で下車、徒歩5分ほどです。お車でお越しの場合は、門前にある駐車場をご利用ください。ただし、神社の前の道路は非常に道幅が狭いため充分ご注意ください。
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基本情報
- 別名
矢落神社 - 所在地
奈良県大和郡山市矢田町965 - 文化財指定
重要文化財(本殿、末社八幡神社社殿) - アクセス
- 近鉄橿原線「郡山駅」から奈良交通71・72系統「大和小泉駅東口行き」で「横山口」下車、徒歩約7分
- JR関西本線「大和小泉駅」から奈良交通71・72系統「近鉄郡山行き」で「横山口」下車、徒歩約7分
- 駐車場
境内横にあり/約10台/無料 - 拝観時間
境内自由 - 御朱印
無し - 所要時間
約10分