【常勝寺(兵庫県丹波市)】青紅葉が彩る「鬼こそ」の寺

兵庫県丹波市 常勝寺 本堂
兵庫県丹波市 常勝寺
兵庫県丹波市 常勝寺

兵庫県丹波市、旧山南町のはずれに位置するじょうしょう

本堂には鎌倉時代作の銅造千手観音がお祀りされ、紅葉の季節には多くの参拝客が訪れます。

常勝寺はこんなところ

寺伝によると、大化年間(645-650)に法道上人が七堂伽藍を建立し、常勝寺を創建したと伝わります。最盛期には僧房七十余が立ち並ぶ一大伽藍を誇りましたが、永保年間(1081-1084)の火災によって一山全て灰燼に帰しました。

その後、槇尾山施福寺(大阪府和泉市)の浄意上人が本堂および末社を再建しますが、天正三(1575)年に兵火を被り、再び全山消失しました。のち再興に着手した当山の智光法印は工半ばにして亡くなってしまいますが、元禄十(1697)年に良海法印が本堂の再建を果たします。以降寺勢は衰退し、寺坊も慈眼院のみとなりますが、当山十六世実応法印によって境内が整備されて現在に至ります。
(お寺発行のパンフレットと現地案内板より)

兵庫県丹波市 常勝寺

常勝寺の境内は山の斜面を切り開いて築かれ、中腹に塔頭の慈眼院、最奥部に本堂と薬師堂が立ちます。

毎年2月11日には五穀豊穣、無病息災を祈願する会式が行われ、この会式はお寺によっておにうちついおにやらいなど様々な呼称がありますが、常勝寺では「鬼こそ」と称しています。こうした会式は播磨地方に多く見られますが、丹波地方では当寺にしか伝承しておらず、他と比較して鬼面の大きいのも特徴だそうです。

ご本尊の千手観音と薬師如来はそれぞれ33年に一度開帳される秘仏であり、近年では2013年に開扉されました。

境内を散策する

青紅葉が彩る幽玄な境内

兵庫県丹波市 常勝寺

常勝寺は丹波市南部、旧山南町の南東部に位置し、山号が刻まれた石碑と山田川に架かる普門橋が目印です。

兵庫県丹波市 常勝寺 仁王門

お寺の入口には弁柄色の仁王門が立ち、この先本堂まで石段が延々と続きます。

兵庫県丹波市 常勝寺 金剛力士
阿形像
兵庫県丹波市 常勝寺 金剛力士
吽形象

現在はお寺を守護すべく周囲を睥睨する吽形象ですが、2020年には頭部がスズメバチに巣くわれてしまうという災難に見舞われました。巣を取り除く作業時には胎内から元禄八(1695)年の墨書が見つかり、今後の調査次第ではあるものの、仁王像の制作年が判明するかもしれません。

兵庫県丹波市 常勝寺

本堂まで続く石段は360段にも及びますが、蹴上げが低く踏み面も広いため、それほど辛い道のりではありません。

兵庫県丹波市 常勝寺

参道の左右にはときおり写真のような平坦地が見られますが、かつては僧房が立ち並んでいたのでしょう。

兵庫県丹波市 常勝寺

常勝寺は紅葉の名所として有名ですが、筆者が訪れた5月には若々しい青紅葉を楽しむことができました。

兵庫県丹波市 常勝寺

普段立ち入ることはできませんが、石垣からせり出すように立つ慈眼閣からは美しい眺望が楽しめそうです。

兵庫県丹波市 常勝寺

慈眼院には書置きの御朱印やパンフレットが置かれているほかに、住職の奥様お手製のかわいい苔玉などが販売されています。

兵庫県丹波市 常勝寺

慈眼院の美しい庭園は見どころの一つですので、ぜひ覗いてみてください。

兵庫県丹波市 常勝寺
兵庫県丹波市 常勝寺
兵庫県丹波市 常勝寺

杉の大木が林立する慈眼院より先は神秘的な雰囲気が漂い、参道脇の石仏が参拝客を見守ります。

33年に一度開帳される千手観音と薬師如来

兵庫県丹波市 常勝寺 本堂

参道の終点となる平坦地には弁柄色の本堂と薬師堂、鐘楼が立ち、苔むした石垣と土塀が重厚な雰囲気を漂わせます。

兵庫県丹波市 常勝寺 本堂

元禄十(1697)年に建立された本堂にはご本尊の千手観世音菩薩がお祀りされ、毎年2月11日にはここで鬼こそが行われます。

  • 千手観世音菩薩立像
    銅造、像高73cm、鎌倉時代初期、重要文化財

千手観音は法道上人伝来の護念持仏を鋳込んで造立されたと伝わります。その作風から鎌倉時代初期の作と考えられていますが、永保年間の火災ののちにご本尊として造立されたのでしょう。

千手を四十二本の腕に代表させた平安時代以降に広くみられる形式をあらわす通形の千手観音であり、化仏を焼失した点が惜しまれるものの、すらりとした体躯からは凛とした存在感を放ちます。銅造でありながら別々に鋳造された胴体と腕部を矧ぎ寄せる珍しい造りとなっています。

兵庫県丹波市 常勝寺 薬師堂

薬師堂内の厨子にはご本尊と同じく33年に一度開帳される薬師如来がお祀りされています。

  • 薬師如来坐像
    木造(檜)漆箔・玉眼、寄木造、像高75.8cm、鎌倉時代初期、重要文化財

現在は薬師堂に安置されている薬師如来ですが、かつては奥の院のご本尊であったそうです。平安時代後期に見られる穏やかな像容を示す一方で、玉眼が嵌入され、要所が引きしまった造形は鎌倉時代の作風を感じさせます。

2022年には美術院国宝修理所(京都市)にて破損していた両手親指や左肩の亀裂、金箔の剥落などが修復されました。ご住職は修復を機会に薬師如来の一般公開を検討されており、公開が実現した折にはそのお姿をぜひ拝したいものです。

兵庫県丹波市 常勝寺
兵庫県丹波市 常勝寺

本堂付近は大変心地よく静かな空間となっており、心が癒される雰囲気のなかゆったりとお詣りすることができました。

兵庫県丹波市 常勝寺

権現社の背後には小さな岩屋があり、小柄で可愛い不動明王がお祀りされています。

まとめ

神聖な雰囲気が感じられる静謐な境内が魅力的な常勝寺。ご本尊の千手観音と薬師如来は秘仏であるため普段は拝観することができませんが、毎年2月11日には鬼こそが行われ、春には桜、秋には紅葉が楽しめるなど見どころが多いお寺です。

最寄りの「谷川駅」からは徒歩25分ほど少し遠く、昼間時間帯の電車の運行本数が概ね1時間に1本と少ないため、お車でのお詣りをおすすめします。境内前の駐車場にくわえ、仁王門の右手に比較的大きな駐車場があるため安心してお詣りいただけます。

兵庫県丹波市 常勝寺

基本情報

  • 正式名称
    竹林山常勝寺
  • 所在地
    兵庫県丹波市谷川2630
  • 宗派
    天台宗
  • 指定文化財
    重要文化財(銅造千手観音立像、木造薬師如来坐像)
  • アクセス
    JR福知山線「谷川駅」より約1.8km/徒歩約25分
  • 駐車場
    境内前にあり/約10台/無料
  • 入山時間
    拝観自由
  • 御朱印
    可/庫裏にて
  • 所要時間
    約30分

 

参考
お寺発行のパンフレット・現地案内板
常勝寺ホームページ 最終アクセス 2024年8月12日