【當麻寺(奈良県葛城市)】① 中将姫と當麻曼荼羅

奈良県葛城市 當麻寺 西塔
奈良県葛城市 當麻寺 本堂
奈良県葛城市 當麻寺 東塔
奈良県葛城市 當麻寺 西塔

奈良県葛城市、二上山の東麓に位置するたいでら

日本で唯一東西双塔が揃って現存する寺院であり、當麻曼荼羅信仰とちゅうじょうひめ伝説が有名です。

當麻寺はこんなところ

推古天皇二十(612)年に用明天皇の第三皇子親王によって、前身となるまんぽうぞういん禅林寺が河内国(現大阪府太子町)に創建されます。白鳳九(681)年に麻呂古親王の孫たいひとくにが万法蔵院を役行者練行の現在地に移し、當麻寺と号しました。当初のご本尊は金堂にお祀りされている弥勒菩薩でしたが、曼荼羅信仰の隆盛に伴ってご本尊が當麻曼荼羅へと移り変わりました。
(中之坊発行のパンフレットより)

奈良県葛城市 當麻寺

當麻寺は高野山真言宗と浄土宗の両方を信奉する点が特徴的で、真言宗五ヶ院と浄土宗八ヶ院の塔頭がお寺を護持し、本堂(曼荼羅堂)は真言宗と浄土宗の兼帯であり、他のお堂は真言宗が管理しています。

参詣道沿いの門前町には町家や土倉が立ち並ぶなど古い町並みが残り、當麻寺は大きな寺院ですが周辺は観光地化しておらず落ち着いた雰囲気です。境内には本堂と金堂、講堂の通称伽藍三堂を中心に多くのお堂が立ち並び、数多くの貴重な文化財を有します。

また、毎年5月14日には中将姫が極楽往生を遂げた様を再現する「しょうじゅうらいごうねりようしき」が執り行われます。

中将姫ってどんな人?

最初に、當麻寺と所縁の深い中将姫について簡単に紹介します。

奈良県葛城市 當麻寺 中将姫
中将姫像

中将姫は天平十九(747)年に藤原豊成の娘として誕生し、5才の時に母を亡くします。生母の死後は継母に妬まれて次第に命を狙われるまでになり、雲雀山(奈良県宇陀市と伝わります)へ逃れて隠棲生活を送ることになりました。その後、豊成公と再会し都に戻りますが、継母は中将姫に手をかけようとした罪の意識から自ら命を絶ちます。

中将姫は継母の死に胸を痛め、出家を決意し當麻寺に向かいます。当初は入山を認められず尼のもとで修業していましたが、後にお寺に入り中将法如という名前を授かります。極楽浄土への思いを募らせる中、みほとけから蓮をたくさん集めるようにとお告げを受けると、集めた蓮糸を用いて一夜にして當麻曼荼羅を織りあげました。

そして、29歳のときに阿弥陀の来迎を受けて極楽へ往生するのです。

見どころ

伽藍の中心となる三棟のお堂

當麻寺には数多くのお堂と塔頭寺院が立ち並びますが、その中心的な存在となるのが本堂(曼荼羅堂)と金堂、講堂の三棟のお堂です。外観を見るだけでも充分雰囲気を味わうことはできますが、拝観料500円で三棟のお堂をすべて拝観できますので、ぜひ堂内まで入ってお詣りされることをおすすめします!

奈良県葛城市 當麻寺 本堂
奈良県葛城市 當麻寺 本堂
本堂(国宝)

本堂は曼荼羅堂ともいい、その名の通りご本尊の當麻曼荼羅が安置されています。當麻曼荼羅は約4m四方に阿弥陀如来と脇侍の菩薩を中心とした極楽浄土が描かれています。当初の曼荼羅は織物でしたが、現在はその模写である絵画がご本尊としてお祀りされています(當麻曼荼羅のお姿はこちら)。

奈良県葛城市 當麻寺 金堂
金堂(重要文化財)

金堂と講堂は平重衡の南都焼き討ちによって焼失し、鎌倉時代に再建されました。

金堂には日本最古の塑像である釈迦如来と異国風の相貌をした四天王がお祀りされています。

奈良県葛城市 當麻寺 講堂
講堂(重要文化財)

講堂(重要文化財)弘仁時代から鎌倉時代にかけて造立された様々な仏像が多数安置されており、こちらも必見です。

東西双塔が揃って現存するのは當麻寺だけ!

境内南側の高台には當麻寺の象徴的存在である2つの塔が並び立ちます。ともに三重塔ですが、両塔には珍しい特徴や様々な違いが見られます。

奈良県葛城市 當麻寺 西塔
奈良県葛城市 當麻寺 東塔

天平時代に建立された東塔は法起寺(奈良県斑鳩市)の三重塔に次いで二番目に古い三重塔です。東塔の特徴として、初層のみ三間(一面に柱が4本あり、柱間が3つ)で、二層目と三層目は二間(一面に柱が3本あり、柱間が2つ)というほかに類を見ない構造が挙げられます。

奈良県葛城市 當麻寺 西塔

東塔よりもやや新しい西塔は、平安時代に建立されました。両塔に共通する珍しい特徴としては、相輪の九輪(塔の頂上部の輪装飾)が8つしかないことが挙げられます。

庭園が美しい四ヶ院の塔頭

當麻寺には十三ヵ院の塔頭ありますが、そのうち護持寺院である四ヶ院は一般公開されており、それぞれ雰囲気の異なる美しい庭園が見どころです。

奈良県葛城市 當麻寺 東塔
奈良県葛城市 當麻寺 香藕園

役行者が開いたとも伝わる中之坊は當麻寺最古の塔頭であり、中将姫剃髪の地と伝承されます。東塔を借景にした「こうぐうえん」は、国指定名勝及び史跡に指定されている県下屈指の名園です。

奈良県葛城市 當麻寺 中之坊書院
書院(重要文化財)

霊宝館で中将姫ゆかりの宝物拝観したり、書院でお抹茶を頂くことができるなど中之坊は美しい庭園以外にも見どころがたくさんあります。

奈良県葛城市 當麻寺 護念院
奈良県葛城市 當麻寺 護念院

護念院はしょうじゅうらいごうねりようしきの菩薩面や装束を管理しており、表情が異なる3つの庭園を有します。

奈良県葛城市 當麻寺 西南院
奈良県葛城市 當麻寺 西塔

西さいいんは當麻寺の裏鬼門(南西)を守護することを目的として建立されました。現在は関西花の寺第21番であり、石楠花や牡丹、紅葉など季節によって様々な花をお楽しみいただけます。

また、境内西側に位置する高台は東塔と西塔を一望できるぜひとも押さえておきたいスポットです。

奈良県葛城市 當麻寺 奥院楼門
楼門(重要文化財)
奈良県葛城市 當麻寺 奥院
阿弥陀堂(左)と御影堂(右・重要文化財)
奈良県葛城市 當麻寺 奥院大方丈
大方丈(重要文化財)
奈良県葛城市 當麻寺 奥院
浄土庭園

奥院は當麻寺最大の塔頭であり、浄土宗総本山知恩院(京都市東山区)の「奥之院」として建立されました。重要文化財に指定されている三棟の建造物と美しい浄土庭園は必見です。

まとめ

伽藍三堂や二棟の三重塔、各塔頭の美しい庭園など見どころが尽きない當麻寺。大きなお寺でありながら、落ち着いた雰囲気の中でゆっくりとお詣りできるのも嬉しいポイントです。筆者としては伽藍三堂や三重塔だけではなく、塔頭もいくつか拝観されるのがおすすめです!

最寄り駅の「当麻寺駅」からは徒歩12分ほどです。お車でお越しの場合は、お寺の周辺にある有料駐車場をご利用ください。奥院駐車場は奥院を拝観される方限定の駐車場ですが無料で利用可能となっていますので、奥院を拝観される方はこちらの駐車場をご利用ください。

次の記事では、伽藍三堂と東塔・西塔について詳しくご紹介します。

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本記事では、伽藍三堂と東塔・西塔、當麻曼荼羅について詳しくご紹介します!基本情報や見どころをまとめた前回の記事はこちら。[sitecard subtitle=前回の記事 url=https://www.maskt[…]

奈良県葛城市 當麻寺

基本情報

  • 正式名称
    二上山當麻寺
  • 所在地
    奈良県葛城市當麻1263
  • 宗派
    真言宗・浄土宗
  • 鉄道アクセス
    近鉄南大阪線「当麻寺駅」から900m/徒歩約12分
    特急と急行は停車しません(牡丹開花シーズンに急行の臨時停車あり)
  • 駐車場
     台数料金
    当麻観光門前駐車場17台500円
    薬師門前駐車場6台500円
    當麻寺観光駐車場約10台500円
    當麻寺奥院駐車場2ヶ所計約40台無料(奥院拝観者のみ)
  • 拝観時間
    境内自由/伽藍三堂の堂内拝観と塔頭の拝観は9時~17時
  • 拝観料
     大人小学生その他
    伽藍三堂500円250円 
    中之坊500円250円拝観とお抹茶 1000円
    西南院300円100円拝観とお抹茶 700円
    護念院300円 
    奥院300円150円

    宝物館込

    大人500円/小学生250円

  • 御朱印
    可/本堂受付・各塔頭受付にて
  • 所要時間
    約1時間/塔頭を全て拝観する場合は約2時間

 

参考
中之坊発行のパンフレット
中之坊発行の図録
奈良国立博物館. 2022.『特別展 中将姫と當麻曼荼羅 展覧会図録』奈良国立博物館
東京国立博物館. 2024. 『特別展 法然と極楽浄土 展覧会図録』東京国立博物館
當麻寺中之坊ホームページ 最終アクセス2024年6月9日
當麻寺護念院ホームページ 最終アクセス2024年6月9日
當麻寺西南院ホームページ 最終アクセス2024年6月9日
當麻寺奥院ホームページ 最終アクセス2024年6月9日