![奈良市 五劫院 本堂](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/96fac1ae9f6a23474bb83b97fb1593b3.webp)
![奈良市 五劫院 鐘楼](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/5b0b85c30caac2013923534ba0d4549d.webp)
![奈良市 五劫院 五劫思惟阿弥陀仏](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/36c0db831518fa3c180260ca453c4ed3.webp)
奈良県奈良市、東大寺の北側の通称「きたまち」に位置する五劫院。
アフロヘアーが特徴的な五劫思惟阿弥陀仏が本尊としてお祀りされています。
五劫院はこんなところ
『五劫院縁起』によると、宋にわたった重源上人が善導大師によって造立された五劫思惟阿弥陀仏を請来し、世の人を救い利益をもたらすために、東大寺北門にお堂を建立して五劫思惟阿弥陀仏を本尊としてお祀りされたのが五劫院の始まりだと伝わります。
江戸時代初期には本堂や山門が再建され、現在の寺観が整えられたと考えられています。
重源上人:東大寺大勧進職として、鎌倉時代に東大寺の復興に尽力した浄土宗の僧
![奈良市 五劫院 本堂](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/60762af7ddeaabd6a6ef7518bb95ec01.webp)
五劫院は正倉院から北に10分ほど歩いた静かな住宅街の一角に位置し、背後には佐保川が流れます。境内には江戸時代に再建された本堂と山門のほかに鐘楼と小さなお堂、庫裏が立ち、寺内の墓所には江戸時代に東大寺の再興に携わった公慶上人の五輪塔が鎮座します。
五劫思惟阿弥陀仏の拝観には事前予約が必要ですが、8月初旬の特別公開期間中に限り予約不要で拝観することができます。
可愛らしいアフロヘアーの五劫思惟阿弥陀仏
![奈良市 五劫院 山門](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/d45be46dc343d29a424b7f276a18b464.webp)
お寺の入口に立つ山門(県指定文化財)は本瓦葺切妻造の薬医門であり、正保二(1645)年に再建されました。
![奈良市 五劫院](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/512e1c582168393712b644e9ec24fd18.webp)
境内はそれほど広いわけではありませんが、よく整備されており、明るく開放感があります。
![奈良市 五劫院 本堂](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/2a9c4c496c7d5f018a6172262d6de535.webp)
![奈良市 五劫院 本堂](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/1783c2362e18efca702f264f8234d339-1.webp)
元和十(1624)年に再建された本堂(県指定文化財)は、前方一間を吹き放しとする古様な形式を示します。
奈良ではこうした古代由来の形式を踏襲し、仏堂を再建した例がよく見られます。
![奈良市 五劫院 本堂](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/72a2a6a5c18f46731d52be221b6d948a.webp)
本堂は方八間、本瓦葺寄棟造の建物で、前方には一間の向拝が附されています。堂内は手前を外陣、奥中央を内陣、内陣の両脇を脇陣とし、各部屋の境は中敷居や阿弥陀格子で区切られています。
![奈良市 五劫院 五劫思惟阿弥陀仏](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/36c0db831518fa3c180260ca453c4ed3.webp)
- 五劫思惟阿弥陀仏坐像
木造(檜?)漆箔、一木造、像高124cm、鎌倉時代、重要文化財
五劫思惟阿弥陀仏は全国的にも珍しい仏像で、なかでも五劫院像は東大寺勧進所像と並んで鎌倉時代に遡る最古級の作例です。アフロヘアーのようなボリュームある頭髪が非常に印象的ですが、なぜこのような通形の阿弥陀仏と異なるお姿をされているのでしょうか。
『無量寿教』が伝えるところによると、阿弥陀仏はまだ如来になる前、法蔵菩薩と呼ばれていたときに、一切衆生を救済するために五劫というとても長い期間瞑想に入ったそうです。その様子を表したのが五劫思惟阿弥陀仏であり、ボリュームのある頭髪は長い修行の間に髪が伸びてしまったことを表現しています。
ボリュームある頭髪が目を引きますが、実際にその姿を拝すると頭髪のほかにも見慣れない特徴がいくつかあることがわかります。
頭髪だけでなく頭部も大きく存在感があり、瞑想中のため目や口は閉じます。豊かな肉付きの体躯に厚い袈裟を纏い、腹前で定印を結んだ両手と両足を衣にくるんだ異国風の姿からは、重源が本像を中国からもたらしたという縁起も単なる伝承ではないように感じられます。
なお、五劫思惟阿弥陀仏は内陣中央の厨子内にお祀りされていますが、やや距離がある外陣からの拝観となるため特徴的な頭頂部の全容を確認することはできません。
![奈良市 五劫院 見返り地蔵](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/29503c79b32d997c5f065d41a028d80f.webp)
本堂裏にある墓地の入口には小さなお堂が立っており、二軀のお地蔵さまがお祀りされています。そのうち左側のお地蔵さまは「見返り地蔵」、別名「朝日地蔵」と呼ばれ、人々を救済するために歩いている様子を表現した像です。
まとめ
可愛らしく特徴的なアフロヘアーが魅力的な五劫思惟阿弥陀仏がお祀りされる五劫院。市内中心部に位置するお寺ではありますが、参拝客も少なく、ゆっくりとお詣りできるので、東大寺に訪れた際には足を延ばしてみてはいかがでしょうか。8月の特別公開期間を除きご本尊の拝観には予約が必要ですので、ご希望の方は事前にお電話でご予約のうえお詣りください。
公共交通機関でお越しの場合は、「近鉄奈良駅」・「JR奈良駅」から奈良交通バス「青山住宅前」行き、または「州見台八丁目」行きで「今在家」下車、徒歩3分ほどです。お寺の近くに参拝者用の駐車場がありますが、周辺は細い道が入り組んだ住宅街ですのでお車でお越しの方は充分にご注意ください。
![奈良市 五劫院](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/accbcc0ab9a35f38ec13fedbc56d2982-1.webp)
基本情報
- 正式名称
思惟山五劫院 - 所在地
奈良県奈良市北御門町24 - 宗派
華厳宗 - 文化財指定
重要文化財(木造五劫思惟阿弥陀仏坐像)
県指定文化財(山門、本堂) - アクセス
「近鉄奈良駅」/「JR奈良駅」から奈良交通バス118系統「青山住宅前」または153系統「州見台八丁目」行き、「今在家」下車、徒歩約3分 - 駐車場
あり/10台/無料 - 拝観時間
要予約 - 拝観料
志納 - 御朱印
可/要予約 - 所要時間
約15分
![奈良市 五劫院 駐車場](https://www.masktomoe23.com/wp-content/uploads/2023/12/116194180ea1728c4735346004228e9d.webp)
参考
お寺発行の栞
奈良国立博物館. 2006.『特別展 大勧進 重源 展覧会図録』奈良国立博物館
東京国立博物館. 2024. 『特別展 法然と極楽浄土 展覧会図録』東京国立博物館